候補の子犬 育成協力を 日本盲導犬協会が募集
2014年10月26日
月齢5カ月のクラスの講習会に参加するパピーウオーカーと子犬=横浜市港北区で
パピーウオーカーをご存じだろうか。視覚障害者の歩行を手伝う盲導犬の候補となる子犬の飼育ボランティアだ。訓練前に人と触れ合う楽しさや褒められる喜びを教える役割を担い、盲導犬の繁殖や訓練を行う日本盲導犬協会(東京)が募集している。その生活の様子を聞きに、月1回講習会を行っている協会の神奈川訓練センター(横浜市港北区)を訪ねた。 (上條憲也)
「カム(来い)!」
体ごとクルッと向ける顔は、心なしかうれしそう。路上で別の犬とすれ違う場面を想定し、気を取られる前に呼び戻す練習だ。
戻ってくるとパピーウオーカーが優しく声をかける。「グッド、グッド!」。七匹が集まった月齢五カ月のクラス。たっぷり頭をなで、褒めていることを伝える。
「いい表情をしている。グッドという言葉が何より重要です」と訓練育成部の鈴木知之リーダー。「細かなことは訓練に入ってからでもできるので」。クラスはきょうだい犬が基本で、上手にできれば飼い主みんなで拍手するなど家族のような雰囲気が広がる。
月齢四カ月のクラスには、初めてパピーウオーカーになった横浜市青葉区の会社員降旗秀樹さん(49)が、雄のラブラドル犬「エルフィー」といた。
十四年飼ったミニチュアダックスを二年前にみとった。「悲しくてもう飼えない」と思ったが、愛犬との暮らしには収穫があった。「虫だって殺しちゃいけないよ」と口にする娘たちに、「犬との生活が人格形成に与える影響は計り知れない」と応募した。
期間は生後二カ月から、訓練のため協会に戻る一歳までの十カ月間。訓練を経て盲導犬になれるのは三~四割だ。
日中は主に妻和泉さん(42)が散歩に連れだし、休日は家族と旅行にも行く。夜寝なかったり「たいへんな時もあった」が、降旗さんは「多くの体験をして、ぜひ盲導犬になってもらいたい」と願う。
センターは現在七十一匹を、県内や東京都内を中心に、同じ数の家庭に預けている。盲導犬は元気なうちの十歳で引退する。数を確保するには、子犬を育てる協力者が欠かせない。
相模原市の小山隆弘さん、智香子さん夫妻は、この十年で十匹目を育てるベテラン。うち四匹が盲導犬になった。犬との生活は「癒やされる」ばかりか、育てた盲導犬と暮らす視覚障害者との交流機会ももたらしてくれた。活躍する姿を間近で見ると、智香子さんは「ここまでできるようになったのね」とうれしくなるという。
パピーウオーカーに委託される月齢2カ月ごろの子犬(日本盲導犬協会提供)
協会が管理する親犬の出産予定が年間計画を上回るペースで十一月まで相次いでおり、二十家族以上を募集している。来年一月までに再び迎えるピークに備えれば、さらに三十家族の協力が必要という。鈴木リーダーは「大型犬の飼育に不安を抱かれる人もいるだろうが、講習や訪問指導でサポートしていく」と約束し、協力を呼び掛ける。
<パピーウオーカーの条件> 日本盲導犬協会神奈川訓練センターは、(1)移動手段として車がある(2)月1回の講習会に参加できる(3)室内飼いができ、留守時間が少ない(4)1人暮らしでなく、家族全員がしつけに参加できる(5)犬を飼育していない-などを条件に挙げる。えさ代は自己負担だが、医療費は3カ月で1万5000円まで協会が負担、トイレサークルの貸し出しもある。見学など問い合わせは同センター=電045(590)1595(平日)=へ。
以上 東京新聞から転載
記事URL
http://www.tokyo-jp.co.jp.co.jp/article/kanagawa/20141026/CK2014102602000104.html