パピーウォーカー視点ではなく、パピーの視点でかかれた本をご紹介します。
さよならをのりこえた犬ソフィー
角川つばさ文庫から2019年に発刊された、盲導犬について書かれた文庫本。
さよならをのりこえた犬 ソフィー 盲導犬になった子犬の物語 (角川つばさ文庫)小さい子も読めるようふりがなもしっかりふられ、イラストも漫画風で読みやすい一冊でした!
パピーウォーカーだけのお話ではなく、繁殖犬ボランティアのところで生まれるところからスタートする物語は、生まれてから盲導犬になるまでを通して読むことができます。
パピーの気持ちになって書かれているので『お別れが悲しい』『未知への恐怖』などがあり、読んでいる途中で「この本は盲導犬普及のためには向いていないのでは…」と心配になりました。
ですが、ぜひ最後まで読んでみてください。
盲導犬候補の犬たちは、何を思うのか
よく議論される「盲導犬は動作を制限されてかわいそう」や「仕事ばかりさせられて愛されていない」、「犬らしい生活ができず、何でも我慢している」などの意見は、果たしてそうなのでしょうか。
もちろん「人間のために働くのが幸せ」「我慢しているわけではない」という、普及する側の考えもあくまでも想像に過ぎませんが
実際パピーウォーカーとして、また繁殖犬ボランティアとしてかかわっていくうちに『その場その場で、この子たちはきっと幸せを感じているんだろう』と思うのです。
未来を過度に心配したり不安に感じたりせず、過去と今を比べて悲嘆したりする…というのは、人間の勝手な妄想なのかもしれません。(この物語では擬人化されているので、そういった表現がありますが…笑)
繁殖犬のお母さんと別れるシーンは、つい半年前に出産した仔犬をボランティアさんに引き渡した日を思い出して、ぐっときました。
『愛情のおすそ分け』という素敵な言葉
最後に、あとがきにあった素敵な言葉と文章を引用します。
「盲導犬は五つのお別れを経験します。1、母犬、兄弟犬との別れ(繁殖犬飼育ボランティアとの別れ)2、パピーウォーカーとの別れ 3、盲導犬協会の訓練士との別れ 4、ユーザーとの別れ 5、引退犬飼育ボランティアとの別れ──そして天国へ向かいます」
(中略)
もしユーザーさんが困っていそうだったら、犬にではなく、ユーザーさんに「お手伝いしましょうか」「信号は赤ですよ」などと声をかけてください。勇気がいりますが、あなたの愛情を、少しだけ分けてください。「愛情のおすそ分け」が広がれば、視覚障害の方たちに限らず、人間も動物も、すべてがより住みやすい世界になると思います。